院長ブログ

心遺産

2021年6月24日

 「早く逝きたい」、「お父さん迎えに来てくれないかしら」とご高齢の患者さんからは毎日一回は漏れる言葉。医師として何と声をかけるかいつも悩んでいます。以前は「そんなこと言わないで下さい」と優しく返したり、「死ぬ時期は自分で選べません。それまで楽しみを見つけて頑張りましょう。」とも言ってきました。しかし自分が患者さんの立場ならどれもしっくり来ないなぁ、と感じてしまうことを敢えて言いたくもなくなります。

 僕たちは生まれてから死ぬまで成長できると信じています。身体や記憶の力は必ず落ちるし、長く生きればパートナーや兄弟、友人との死別は増えるでしょう。しかし、自分以外の他人と関わる時間や自分を見つめる時間は必ず累積していきます。だから毎日を大切に生きて、それを楽しみ、周りに優しさと勇気を与えていけば、その生き様は亡くなったあとも必ず誰かの心に遺ります。心の遺産を作れるように生きていくのはどうでしょうか?



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