院長ブログ

原始的な解釈

2025年5月24日

 われわれ人間は生物界において、圧倒的な進化を遂げた。医学の進歩により得られた生命延長も大きな一つの進化と言えよう。しかし肉体的にわれわれの能力は、進化してきたのであろうか?自力で空も飛べなければ、駆け足だってそこまで速くはなっていない。医学に代表される科学や技術といった文明的なものに比べれば、それは遠く及ばないであろう。だとすれば、われわれの肉体の神経伝達物質から得られる精神構造などは原始的、つまりより生物的に考えた方がリーズナブルである。人類がここまで進化する過程において、不安、緊張、心配は、敵から身を守るために無くてはならない生理現象。人は一人では生きられないことも原始時代からも明らかである。親から守られないと成長できない子供、繁殖のための異性愛、誰かと繋がっていたいという社会的欲求、集団生活であるからこその承認欲求…。われわれの悩みの源は、実は原始的な本能であり、それを複雑にしているのは悩んでいる人自身なのである。自分の苦しみを原始的に解釈することで救われることの邪魔をしているのも、進化した文明そのものではなかろうか。



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