院長ブログ

恩師との別れ

2023年3月10日

 僕には沢山の恩師がいる。学校の先生、柔道の先生、大学の教授、医師になってからの先輩医師。多くの教えから自分ができていると改めて思う。先日大好きな耳鼻科の先生が亡くなった。

 幼い僕にはその先生が怖かった。テキパキと診察と処置をして、待合室に溢れんばかりの患者さんを次から次へと呼んでいった。自分の順番が近づくと緊張が増し、順番が来て診療台に座ると息を止めて終わるのを待った。右耳と左耳をできるだけテキパキ見せると「いいよ」と言われて診察が終わるとホッとした。先生に診察を受けたのは10回くらいかもしれない。でも今でもよく覚えている。息子を連れて行ったことも2、3回あったが、30年前と同じ風景だった。

 先生と同じ大学に合格できたとき、報告に行った。自分のことのように喜んでくれた笑顔だった。医師になってからも困って電話をすると、耳鼻科の疾患をよく教えてくれたし、内科の患者さんをたくさん紹介してくれた。

 震災後に、放射線汚染が心配で、生まれたばかりの二男のミルクのための水をたくさん買っていた僕を偶然市中で見かけた先生は、大量のミネラルウォーターを送ってくれた。感謝が止まらなかった。

 忘れられないのは、6年前に仕事で悩んでいるときであった。電話で話す機会があった際に「私は外に出られないけど、お会いしたいわ」と自宅に招いて下さった。引退され、療養されていたけど、僕も会いたかった。お互いの近況報告後に、僕の仕事の話を聞いてくれた。その時間はあっという間だった。別れ際、「あなたなら大丈夫よ」って。もともと小柄な身体がさらに小さくなっても、大きくはっきりした声で励ましてくれたのを一生忘れない。それが先生と会ったのは最後となった。

 先生は僕の人生の節目で力づけてくれた。僕を支えてくれた大切な恩師、ありがとうございました。



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